メリル・ストリープに訊く、輝きの源――「年を重ねることは、豊かになること」
この日は、シックな紺色のワンピースに黒いブーツ、黒縁めがねという飾らないスタイリング。唯一、鮮やかだったのは指先のまっ赤なネイル。そのさりげない女性らしさは、ますますメリルの知的さを際立たせる。そして、話は女性としてのサッチャーの人間力へ。
「政治家として男社会で男と対等に生きていくために、彼女は、泣くことや笑うことといった女の弱々しさを決して表に出さなかった。だから“鉄の女”と呼ばれたのね。それでも彼女が女性として魅力的だと思うのは、たとえ首相になっても女らしさを失わなかったこと。ハンドバッグやキラキラしたブラウスを着ることで、彼女は女らしさを保っていたの」。
親しみを込めてサッチャーの想いを代弁する。政治家としての栄光と挫折を経験し、そのために犠牲にしたのかもしれない家族の愛に戸惑い、妻として、母として、ひとりの女性として必死で生きたサッチャーの人生に、観客は自然と自分自身を重ね合わせることだろう。特にセリフのないシーンで深く共感してもらえるのではないかと、メリルは期待を寄せる。
「映画のセリフのない部分は、観客一人ひとりがセリフに惑わされることなく、自分のイマジネーションを膨らませて観ることができると思うの。