【シネマモード】ポーランドの名もなき英雄に思いを馳せる、『ソハの地下水道』
そして、ポーランドといえば、ナチによるユダヤ人迫害の記憶も、決して消えてはいません。ホロコーストの象徴とも言えるアウシュヴィッツ強制収容所があるのもこの国。ユネスコは、二度と同じ過ちを人類が起こさないようにと、1979年に負の世界遺産として認定しています。ただ、悲劇が収容所だけで起きたわけでないのは周知の事実。ワルシャワでも、近代的なビルの裏側に、ゲットーがそのまま残っていたりします。発展する大都市の片隅にも、忘れられない記憶は確実に残されているのです。
そんな辛い歴史を描いているのが、『太陽と月に背いて』、『敬愛なるベートーヴェン』などで知られるアグニエシュカ・ホランド監督の新作『ソハの地下水道』。ホロコーストの嵐が吹き荒れる1943年、ナチス占領下のポーランドの街・ルヴフ(現ウクライナ領リヴィヴ)が舞台です。
主人公は、下水処理に携わる貧しいポーランド人・ソハ。生計を立てるためにはコソ泥さえ厭わない、ずる賢い小悪党です。そんな彼が、仕事中に下水路でユダヤ人グループを発見するところから物語は動き出します。ユダヤ人たちは、強制収容所行きを免れるため、ゲットーから下水道へと続く通路を掘っていたのです。