【独女のたわごとvol.6】忘れられない香りと味…土曜日のコーヒー
(Photo:cinemacafe.net)
みなさま、こんばんは。2か月ご無沙汰しておりました。秋は深まれど女のツヤ度はさほど深まらず、乾いた北風でかさつくお肌を潤すために、ちょっぴり高めのオイルやらクリームやらを重ねて重ねて、お肌と心、ギリギリ潤いを保っている古山エリーです。そんな今宵は、ショートストーリーという形で“たわごと”おつきあいくださいませ。
忘れられない香りと味がある。
コーヒーを淹れるときにふと思い出すのは、ある男性が淹れてくれた土曜日のコーヒー。金曜日の深い夜を過ごし、朝、目が覚めると隣には彼が寝ていた、といううっすらとした痕跡があるだけ。本人の姿はない。
そして、ひとつドアの向こうに男の温度を感じる。柔らかくて香ばしい香りとドリップコーヒーを淹れるときのマシン独特の、コポッ、コポコポコポッという小さなリズムと音に紛れて「コーヒー、飲むよね?」ちょっと低い声が耳に届く。それが、いつかの土曜の朝の風景。
漆黒の液体が陶器の器に注がれる瞬間まで、ベッドの中でぐずぐずする。それもいつのものこと。ふとんから腕や脚を少しのぞかせみたり、正座をして額を床にあてるようなポーズ、ヨガでいうチャイルドポーズをとってみたり、そんなふうにうだうだしているうちに、「コーヒー」