【シネマモード】欲望、羞恥、痛み、快楽…フォン・トリアーの挑発『ニンフォマニアック』
人があまり表に出そうとしない感情、性質を、臆さず赤裸々に語っていく主人公・ジョーを見ていると、誰よりも純粋で正直に思え、いじらしささえ感じてきます。性への関心、欲求と、純真さとは正反対だと思われていますが、本作を通して、その社会通念に疑問を覚えたりして。
極論を言えば、監督が本作を撮った意図とは、誰もが抱えているくせに、まるでそれがありもしないかのような顔をして暮らす人々に、自分の真の姿を否が応にも発見させる、ということなのかもしれません。それを認識してこそ、より自分や他者への理解が深まる…。そう、やっぱり人間“ありのままで”生きられたら、そのほうがいいに決まっています。つまり、ラース・フォン・トリアーが、『アナ雪』で話題になった“ありのまま”を描くと、こうなっちゃうということなのでしょうか…。
そして本作で驚かされるのは、監督のヴィジョンを実現すべく“本番”も辞さず演技に臨む俳優たち。体だけでなく、心も裸にして作品に献身する姿に、敬意を表さずにはいられません。
欲望、羞恥、痛み、快楽、喜び、悲しみと、多くの劇的な感情を内包するセックスは、人の本質、人の本音を語る際、どうしても避けて通れず、人の何たるかをつきつめればどうしてもそこに行き着くというテーマ。