【シネマモード】欲望、羞恥、痛み、快楽…フォン・トリアーの挑発『ニンフォマニアック』
この作品が、過激表現を主たる目的としたものだったり、思い付きだったり、中途半端な考えで作られたものでないことは、宗教、哲学、芸術にも及ぶジョーとセリグマンとの会話を聞いていれば分かること。つまり、役者たちの身を削るような献身は、壮大なる精神世界をも意識させる本作に、大きな意義を感じたからこその結果なのでしょう。
こういった作品は、性表現ばかりが取り沙汰されがちで、“アートかポルノか”という議論が常につきまといます。でも、正直ってどちらでもいい。アートもポルノも、作り手、観客がそれぞれ感じるべきことで、好みに合うか合わないかで、観客自身が観るか観ないかの判断をしていけばいいわけですから。
つまり、人間というものを突き詰めるために過激な表現を用いた本作は、誰でも楽しめるというわけではありません。でも、映像作品ができる人間表現のひとつの極致を見たいと感じる人にはおすすめしたい1作。ただし、鑑賞の際には、それなりの覚悟が必要なことだけはお忘れなきよう。
(text:June Makiguchi)
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ニンフォマニアック Vol.1 2014年10月11日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国にて公開
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