【シネマモード】勇者の“素顔”が見えてくる…『ディオールと私』
しかも、コレクション準備期間はたいてい5~6か月だというのに、彼に与えられた時間はわずか8週間。ここから、メゾンを支えるお針子たちやスタッフと気持ちをひとつに、秋冬オートクチュールコレクションを成功へと導けるのか。もちろん、今のラフの活躍を見れば、結果は明らか。でもそこに至るまでの緊張感は、こちらまで胃が痛くなってしまいそうなほど。そこを、スタッフたちを納得させるだけのカリスマ性と、その土台となる情熱、ひらめきを生むこだわりゆえに超えていく。クリエーターには才能は不可欠なのでしょうが、むしろ才能よりも、自分を貫く強さと情熱の方が必要なのではないかと思うのです。
例えば、彼がどうしてもコレクションに使いたいとこだわった“アンプリメ・シェンヌ”という織物。これは、布にプリントを施すのではなく、織る前の糸に色をつけるという1940~1960年代の織り方だそうです。
ラフは、これを使って米国の抽象画家スターリング・ルビーの絵画を服の上で再現しようとするのですが、アートを再現する難しさと、それを服の上で行うという難題に、メゾンのファブリック・コーディネーターらは大わらわ。でも、そこで「あ、大変ならいいです」