【インタビュー】<後篇>野田洋次郎 命に向き合い「迷いや躊躇がなくなってきた」
演技をすることとは何で、しないこととは何なのか?生きていく中で人は演技をするものでしょ。実は演技というのは日常にあるんですよね。じゃあカメラの前で演技しないことってどういうことなんだ?カメラを意識するのか?しないのか…?延々と考えて、おそらくは全ての役者さんが一度は通るだろう道を通りました。友人の俳優に『演じている時は何を考えてるの?』と聞いたりもしたんですが、みんな言うことが違って(笑)、それはそれですごく面白かったんですけど…。出した答えは結局、答えになってないかもしれないけど、何かを意識することなくおれでいること。おれの中で宏と響き合うものを引き出してもらうしかないなと。『よーいスタート』が掛かった時も、楽屋にいる時も、共演者の方と話をしている時も、おれでいればいいんだなと思うようになりました」。
だが宏として映画の中で生きるということは、アーティストとしての側面に加え、当然、余命3か月の宣告を受けた男の苦しみや葛藤をも表現しなくてはならなかった。
「そこでも『演じる』ということについてすごく考えさせられました。もし僕がたった一人でひとつの箱の中にいて、カメラを前に『あなたは余命3か月の男ですよ。