【シネマ羅針盤】夏休みの大作に負けない!じんわり怖い『ナイトクローラー』は必見
(Photo:cinemacafe.net)
洋邦問わず数多くの超大作が公開され、“10年に1度の激戦”とも称されるこの夏の映画業界。そんな中、小粒だが大作に負けない注目を集めるのが『ナイトクローラー』。映像パパラッチの暗躍を描くサスペンスで、第87回アカデミー賞で脚本賞候補に挙がった秀作だ。
事件や事故現場のスクープ映像を専門に狙うパパラッチ、通称:ナイトクローラーの存在を知った主人公・ルイスは、コネも経験もないまま、安物のカメラ一台で業界に飛び込む。悪運と「ネットで学んだ」と言う交渉術を武器に、同業者やテレビ局から一目置かれる存在になると、より過激な映像を求めてその行動をエスカレートさせていく…。作品の根底にあるのは、モラルを置き去りに、視聴率のために手段を選ばないメディアへの批判だ。
同時にメディアの非道を嘆きながら、実はさらなる刺激を求めてしまう視聴者に対する皮肉や警鐘も込められている。ここまでなら、映画として決して目新しくはないが、本作は主演を務めるジェイク・ギレンホールの怪演と、貧困や格差といった社会環境がルイスという怪物を生んでしまう悲劇、さらには怒りを飛び超え、もはや笑うしかない“ハッピーエンド”が夜の闇に混ざり合い、不気味かつ美しい一種の人間ドキュメンタリーとなった。