【インタビュー】中谷美紀 30代で取り払った己の限界、40代を前にその目に映る理想
身の程知ったのもあるのかもしれませんが…(笑)」。
先に“肉体労働者”という言葉が出たが、ここ数年で「猟銃」(’11/原作:井上靖/演出:フランソワ・ジラール)、「ロスト・イン・ヨンカーズ」(’13/作:ニール・サイモン./演出:三谷幸喜)、「メアリー・ステュアート」(’15作:ダーチャ・マライーニ/演出:マックス・ウェブスター)と、まさに己の肉体を最大限に使っての表現を求められる舞台にも出演している。30代半ばで初舞台というのも意外な気もするが、出演を決めたのには心境の変化が?
「市江と同じように、自分に限界を設けていたんです。『私には舞台は向いていない』と。舞台俳優さんはやはり身体能力に長けた方たちであり、そうでないといけないと思っていて、私は訳あって体も硬くプロの方のように自由に身体を使えないので…。でもそれでも演じていいのだと演出家の方(フランソワ・ジラール)が教え導いてくださったんです。そうして舞台に携わるにつれて、限界というのは他人が強要したわけでも、目の前に壁のように立ちはだかっていたわけでもなく、あくまで自分の心が勝手に設けていたのだと感じました」。女優という仕事は「10代、20代の頃はアルバイト感覚で『私にはもっと適職があるはず』『いつでも辞めてやる!』なんて思いつつ、やめるタイミングを逃してここまで来てしまった感覚。