【シネマカフェ的サントラのすすめ Vol.5】『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『ラブ&マーシー』『フリーダ・カーロの遺品』
爽やかな「ザ・ビーチ・ボーイズ」を描く映画に、なぜアッティカス・ロスが?と鑑賞前は思ってしまうかもしれないけれど、本編で描かれるブライアンをすっぽりと包む孤独や彼の心の闇には、アッティカス・ロスの緊迫感のあるトラックとてもマッチし、物語に情感を与えている。
多くの幻聴に悩まされていたブライアンが、実際に聞いていたであろう“音”を想像して制作されたという楽曲の数々は、サンプリングされた「ザ・ビーチ・ボーイズ」のさまざまな楽曲の断片を再び再構成するというかなり実験的な内容。そこにアッティカス・ロスならではの空間を包み込むようなメランコリックな空気が加わり、「ザ・ビーチ・ボーイズ」の楽曲と並べられた本作の中でも聞き応えのあるものばかり。
とはいえ、まずなによりブライアンの楽曲はどれもすばらしく、本作をきっかけに「ザ・ビーチ・ボーイズ」のアルバム(特に本編で制作される「ペット・サウンズ」をぜひ)や彼のソロ作に手を伸ばすことを強くおすすめする。壮絶な日々が描かれた物語のラスト、ブライアンとメリンダが見つめあう中で流れる「素敵じゃないか」に涙したひとも少なくないのではないだろうか。
■『フリーダ・カーロの遺品―石内都、織るように』
佐野洋子の名作絵本『100万回生きたねこ』のドキュメンタリー作品『ドキュメンタリー100万回生きたねこ』で注目を集めた小谷忠典監督の新作として公開された本作。