2015年12月1日 21:30
【シネマVOYAGE】肖像画を巡ってニューヨークの旅へ『黄金のアデーレ』
(Photo:cinemacafe.net)
美術館に行き、絵画の前に立つと、その絵がたどってきた歴史を感じるような…気がします。誰が描き、誰のために描き、誰の手に渡って何十年何百年の時間を経て今この時代に存在するのか──。そんなことを考えるだけで、とてもドラマチックです。
『黄金のアデーレ 名画の帰還』は第二次世界大戦中にナチスに奪われた伯母の肖像画を取り戻すため、82歳の女性がオーストリア政府を相手に裁判を起こした、という驚くべき実話をもとにした映画です。ナチスに奪われた絵画奪還話としては、先に公開された『ミケランジェロ・プロジェクト』も同じですが、『ミケランジェロ・プロジェクト』のように何百万点もの美術品を救った人たち(=モニュメンツ・メン)の活躍を描いていることに対し、『黄金のアデーレ 名画の帰還』は、たった1枚の絵画をめぐるパーソナルなお話です(この2作をあわせて観るともっと面白い!)。
どんな物語か──。現在、ニューヨークのノイエ・ギャラリーに展示されているクリムトの名画「黄金のアデーレ」(正式名称:アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像l)。この絵は画家のグスタフ・クリムトがマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)