2017年11月22日 21:00
【シネマモード】アキ・カウリスマキが侘び寂びの様式美で語る今のヨーロッパ
そんな二人が出会ったことで、希望が生まれ始めるのです。
アキ・カウリスマキ監督の作品では、どれほどドラマティックなことが起きようと、登場人物たちは感情の起伏を見せません。顔を合わせてうなずく、握手をする。そういった“形式”によってのみ、キャラクターの気持ちが豊かに表現されるのですから深い!これはもう、様式によって美しさを表現していく様式美の世界です。アキ・カウリスマキ監督の作品は、日本にファンが多いと聞きますが、それは、能や歌舞伎、茶道など様式美が賛美され、理解され、日常生活に近いところで根付いている我が国らしいことかもしれません。(ちなみに、歌舞伎では様式のみで感情を表現し、演技の中で感情を表してはいけないとされています。)
一方で、様式美の文化に慣れていなければ、「なんでみんな無表情なの?意味がわからない」となる恐れもあるはず。抽象画でもいえるように、秘められた表現というは読み取る側にその素地がなければ、なかなか理解されにくいのかもしれません。
日本で育ったものにしてみれば、むしろ抑えられた表現の中に無限の豊かさを感じたりもするのですが。監督も、もしかするとそんなところに共鳴して、日本贔屓になったのかもしれませんね。