【レビュー】原作の大切な言葉を控えめに、誠実にすくい取る『窮鼠はチーズの夢を見る』
恭一と今ヶ瀬が、この2人でよかった。並んで立っているだけで、口喧嘩をしているだけで、肌も露わに交わり合っているだけで、心からそう思える。
自分と闘い、相手とも闘う今ヶ瀬の苦しき恋の闘いに出口が見えない一方、恭一は徐々に変化していく。相手がいてこその受け身だった恭一が、初めて自分1人で恋心と向き合う姿が愛おしい。原作と異なる結末は賛否を呼ぶところかもしれないが、成長物語としてもゆるやかに機能しているラストシーンが大好きだ。
(text:Hikaru Watanabe)
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窮鼠はチーズの夢を見る 2020年6月5日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開
©水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
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