河瀬直美監督作品ならではの“役を積む”瞬間…『朝が来る』メイキング写真
河瀬組では、登場人物が経験してきたこと、これから経験するであろうことを役者たちがリアルに体験する、“役を積む”期間が設けられる。蒔田さんは、実際に奈良の中学校に一定期間通い、卓球部にも所属。その中学校には、後に彼氏となる麻生巧(田中偉登)も通っていたが、実際に付き合うシーンを撮影するまでは話すことは禁止されていたという。蒔田さんは「話すことはなかったけど、そこに(田中が)居ることは意識していた」と話し、付き合う前の男女の距離感が生み出されていたようだ。
また、ひかりに妊娠が発覚したシーンの撮影後、片倉家の両親(中島ひろ子、平原テツ)は巧の家に行き、ひかりと別れてほしいと頭を下げるという場面もカメラを回さずに経験。ほかにもカメラが回っていない時でも劇中の家族で一緒に生活していたことから、いざ撮影が始まるというとき、中島さんが、蒔田さんの劇中衣装を誤って洗濯してしまっていたというハプニングも生まれたそう。
そして、ひかりが出産するまでを安全に過ごすために「ベビーバトン」の施設に入って生活するシーンがあるが、そのシーンは広島で撮影した。ひかりが養子として栗原家に子どもを授けるシーンを撮影する前、浅田さんはたまたま広島に来ていた修学旅行中の中学生を見て、「ひかりもこの中にいるはずだったのに、あの子は今から生んだ子を手放さないといけない」