『スイートリトルライズ』中谷美紀インタビュー 夫以外の人に心奪われていく気持ち…
たしかに、瑠璃子の夫・聡も、瑠璃子が恋に落ちる青年・春夫も、格好いいが決してタフとは言えない。けれど、その男女の間にはなんとも言えない空気感が流れ、その空気感こそが作品の見どころでもある。
2人でいることで余計に寂しい
そして、原作の行間が紡ぎ出すその空気感を表現するために映像で試みたのは、限られた台詞と限りない余韻。その中で中谷さん自身が心打たれたのは「1人でも2人でも寂しいものは寂しいんだよ」という、犬の飼い主のおばあさんの台詞だった。瑠璃子が抱いている孤独について深く考えたという。
「1人暮らしであったなら孤独であることは当たり前で、孤独を感じることはなかったかもしれないけれど、2人でいることで余計寂しさを感じるのかもしれない。瑠璃子は聡にとても尽くす女性ですから、なおさら彼女の想いが一方通行のようにも感じられるんです。たしかに夫としては、帰ってきてすぐにあんなに色々と妻にしゃべられたら鬱陶しいだろうなって思いますが、女性は本来そういうもの。
一見、聡と瑠璃子は特異な夫婦に見えるかもしれないけれど、実は世の中の縮図なのかなと思います」。
共感することが難しいと言いながらも、これだけ瑠璃子を理解している──中谷美紀という女優が演技派と言われ多くの監督から求められているのは、この感性、この才能ゆえ。