韓国から誕生したやんちゃな鬼才 『息もできない』ヤン・イクチュン監督インタビュー
家族のトラブルは、もちろんその深刻さに差異はあるものの、抱えている方が多いと思いますし、100%幸せな家庭で育った人は少ないと思います。また、韓国では、父母や祖父母の世代が社会的に非常に困難な時代、戦争やその弊害が残る状況の中で生きてきて、なかなか子供を手放したくないという風潮があり、子供が家族から精神的に独立するのが遅い。それは、父母の子供に対する愛でもありますが、同時に執着でもあると思うんです。家族から精神的に独立したいと、私も思っていましたし、実際に私が家を出て生活を始めて9年になりますが、精神的に父母から離れて独立することができたのは、ここ3、4年くらいのことです。ちょうど、この映画を作っている時期と重なるんですね」。
自身が直面してきた問題と向き合いながら、同時に、その裏にある韓国の社会的背景を冷静に、客観的に見つめるヤン監督。本作に対する母国、そして家族の反応はどんなものだったのか?
「父母世代の方は悪く受け取ってもおかしくはないのですが、実際に上映後に私に握手を求めてきてくれたのは、同世代よりも父母世代の方が多かったんです。映画の中で暴力シーンなどもありますが、それは父親が悪人だから暴力をふるうというふうには描いてないですし、あくまで歴史的、社会的な構造の中で追い詰められていることを描いてます。