くらし情報『原作の解像度を高める『カラオケ行こ!』、“監督×脚本×俳優”が見事に溶け合った実写映画化』

2024年1月18日 08:15

原作の解像度を高める『カラオケ行こ!』、“監督×脚本×俳優”が見事に溶け合った実写映画化

現実的な「時代の流れ」を盛り込んだ野木亜紀子の脚本

そして、野木氏によるオリジナルエピソードの数々。特筆すべきは「時代の流れによって廃れ、失われゆくもの」の悲哀を混ぜ込んでいるところだろう。例えばヤクザという存在。綾野さんが主演した『ヤクザと家族 The Family』でも描かれたように、暴対法等によって居場所を奪われていく彼らの姿が、再開発によって消えていく街の風景とオーバーラップする構造になっている。

そしてまた、聡実は中学3年生であり、近いうちに卒業し、合唱部や学び舎を離れる運命にある。狂児と聡実の関係はもとより期間限定であり、様々な形で「別れ」が暗示されている点が秀逸だ(さりげない形で交わされる映画と動画の違いも「時代の流れの無常観」を強める重要なキーとして機能している)。

原作の解像度を高める『カラオケ行こ!』、“監督×脚本×俳優”が見事に溶け合った実写映画化

原作のドラマ面での重要なポイントは、狂児と聡実の友情だろう。その部分が強化されるだけでなく、あまつさえ切なさを掻き立て、かつ我々観客が実感している時代性(コロナ禍で街の風景や居場所がなくなる哀しみはより強まった)をも盛り込むこと――山下監督の原作との親和性、野木氏の観客との親和性が溶け合ったことで、笑えるだけでなくより“エモい”作品へと進化した印象だ。

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