『流麻溝十五号』ゼロ・チョウ監督、台湾で初めて女性政治犯を映画で描いた理由
著者の曹欽榮(ツァオ・シンロン)さんが6名の女性にインタビューしているのですが、その全員が台湾籍でした。この時代の資料をたくさん読んで気づいたのは、実は女性思想犯のうち台湾生まれは47パーセントだけで、53パーセントは大陸から来た女性だったこと。ですから、この部分を補足して、より史実に忠実になるようにしなければいけないと思い、映画には大陸から来た陳萍のストーリーを加えました。
曹さんが大陸の女性に話を聞かなかった理由は分かりません。きっと見つけられなかったわけではなく、台湾人の歴史のほうに関心があったからでしょう。
――演じるのはいまの時代に生きる俳優たちです。演出するうえで気をつけた点や、俳優たちにどんな準備を求めたのかを教えてください。
ご存知のように、現在の若者は西洋文化の影響を受けています。
特に台湾は米国の影響が大きいので、若い人の所作や振る舞いはアメリカ人のようなのです。まずは演技指導でそういった動きを全部取り除かなければなりませんでした。
女性思想犯たちは、全員が同じ背景を持っているわけではありません。台湾生まれの人は(日本統治時代に)日本の教育を受けて育っているため、日本語と日本人女性的な所作を学ぶ必要がありました。