生き物に学ぶ、オドロキの「性」と「サバイバル術」(前編)
ミジンコが自然に生み出した『生き残るための戦略』なのです」
井口教授によると、ミジンコがこの戦略を使うのは、たとえば田んぼの稲刈り時だそう。「田植え時期には水があるし、餌である藻もあります。でも秋の稲刈りの頃には田んぼの水はなくなっています。ミジンコにとって『環境の悪化』です。そこでミジンコはオスを生み、耐久卵を作り、水が無く温度が低い冬を生き延びるわけです。そして春になり、再び田んぼに水がはられると、耐久卵からメスが生まれてくるのです」。そして生まれたメスはまたメスを次々に産む、という通常サイクルに戻るそうです。
環境悪化時にオスが登場し、耐久卵を作る。
いざという時に助けてくれるオスは、やはりミジンコにとって、頼りがいのある貴重な存在のようです。
○3. 「オスになるスイッチ」って?
ところでミジンコはどのような仕組みでオスを産むのでしょうか?
井口教授らは約10年前、ペット用のダニ・ノミの駆除剤をオオミジンコの容器にほんの少し入れたときに、オオミジンコがオスばかり産むことを偶然、発見しました。
駆除剤を調べると、『幼若ホルモン』というホルモンの構造を少し変えた物質が使われていました。