生き物に学ぶ、オドロキの「性」と「サバイバル術」(前編)
幼若ホルモンは昆虫の脱皮を遅らせるホルモンで、ノミやダニが成虫になるのを抑制することで駆除剤として機能していたのです。井口教授らはこの幼若ホルモンが、ミジンコがオスを産むときに関わっていることを、突き止めました。
では幼若ホルモンがミジンコのオスにどう関係するのでしょう。「幼若ホルモンは『オスになる遺伝子』のスイッチを入れるんです」(井口教授)。
「ミジンコの卵が発生する時、幼若ホルモンが作用すると、『オスになる遺伝子』のスイッチが入ります。すると産まれるミジンコはオスばかりになるのです」。
このミジンコの『オスになる遺伝子』の実体を、井口教授の研究チームは世界で初めて明らかにしました。
ミジンコは人間と違い、メスもオスも同じ遺伝子を持っています。
スイッチが入らなければメスしか産まれません。しかし、日のあたる長さが短くなったりして環境が悪化すると、ミジンコの体内で幼若ホルモンが作られ、卵に働いて「オスになるスイッチ」を押す。するとオスが産まれることが、井口教授らの実験により確認されています。
○4. そもそも性の決まり方は?温度で性が決まるワニやカメ
ミジンコの場合、環境が性を決めるとはユニークです。