『マトリックス』から完全進化! ウォシャウスキー監督オリジナル新作『ジュピター』に迫る!
宇宙を舞台にした壮大なスケールで描かれるSF映画は、それにぴったりの舞台なのだ。
果たして、『ジュピター』はその期待に十分応えてくれた。「映像革命の新章はじまる」というキャッチコピーは決して大げさではない。まずはその背景の美しさだ。宇宙の支配者たちが住む宮殿はすばらしく荘厳で、なおかつ細部までこだわって作りこまれており、圧倒的なリアリティが感じられる。このリアリティはどこからくるのだろうか。
彼らの文明は地球よりもはるかに進んでいるのだが、建築物や室内のオブジェなどにはどこか中世のようなテイストが取り入れられており、近未来感とうまく融合して、独特の世界観を作り上げている。これが、「どこかで見たようで、見たことがない」という不思議な感覚をもたらしてくれる。
しかし、こうしたオリジナルの世界に少しでもチープ感があると、途端に見ている方としては冷めてしまう。観客は「ああ、作り物だな」と敏感に見抜いてしまうのだ。
『ジュピター』では、「そこまで見る人はいないのでは」と思うほど、背景の細かい部分にまでこだわりぬいて作られている。宮殿だけではない。都市を俯瞰(ふかん)で見る場面があるのだが、そんなところまでおそろしく作りこまれている。