いたちごっこの危険ドラッグの流行と取り締まり - 危険ドラッグと戦うための強い味方「分析機器」の脅威の科学力とは
上の図には危険ドラッグを作り出すのによく用いられているストラテジーを示しています。たとえば大麻に含まれ、違法薬物指定されているカンナビノイド系薬物の構造の中で、人体の神経系に作用し向精神作用を示すのは分子構造の中のほんの一部分です。すなわち、それ以外の部分は少し違っていても同じような作用を持つのです。
以前は、違法薬物と少しでも分子構造が違えば、それは違う薬物と見なされ合法だったので、次々に現れる類似の薬物(いわゆる脱法ドラッグ)を次々と違法薬物指定し、取り締まる必要がありました。しかし2007年から、脱法ドラッグ(危険ドラッグ)を指定薬物として規制できるよう薬事法の一部が改正され、2013年には危険ドラッグの「包括指定」が可能となりました。これは上の図でいうと作用のある青色の部分があれば、他の部分がどのような構造であっても違法薬物と認定するといった方法です。ただし、青色部分に関しても微妙に同じ作用を保ったまま違う分子構造に改変出来る可能性もあり、包括指定すらすりぬける薬物が登場する可能性はあります。このように「効果さえ残っていれば良い」という観点で作られた新規薬物は実は従来の広く知られる違法薬物よりも危険があります。