中国の全地球衛星航法システム「北斗」と、新型上段「遠征一号」 (3) 人工衛星を目的の軌道まで送り届ける「遠征一号」
第1回では、中国の全地球測位システム「北斗」の計画立ち上げから、第2世代衛星によるアジア・太平洋地域を対象にしたサーヴィス開始までの経緯について紹介した。また第2回では、2015年3月30日に打ち上げられた初の第3世代衛星「北斗三号」と、北斗の今後について紹介した。
最終回となる今回は、その北斗三号の打ち上げで使われた新型の上段「遠征一号」について紹介したい。
○「上段」とは
「上段」(Upper Stage)という部品は、あまり有名ではないかもしれない。上段はロケットの最終段、言い換えればロケットと積み荷である人工衛星との間に位置し、衛星を最終的な目的地の軌道へ送り届ける役割を持つ。母機となるロケットとは別の名称を持つものも多いが、影は薄く、たいていの場合「ロケットの第何段」とか、あるいは「最終段」としか呼ばれない。それは間違いではないものの、いくつかの上段に関しては、それ自体が独立したロケット、あるいは宇宙機になっており、また上段の性能がそのロケット全体の能力を決定付けることもあるほどだ。
例えばロシアの「ブリースKM」や「ブリースM」と呼ばれる上段は、エンジンを最大8回再点火することができ、軌道上での最大24時間にわたって運用ができる。