中国の全地球衛星航法システム「北斗」と、新型上段「遠征一号」 (3) 人工衛星を目的の軌道まで送り届ける「遠征一号」
の開発と運用を通じて、ロケット・エンジンを軌道上で何日も運用し、そして何度も再点火させる実績はあるため、根拠としては弱い。
2つ目は、ブリースやフリガートの性能を過剰なものとして捉え、必要な能力のみ出せるようにした結果である可能性だ。実際、フリガートの最大3日間の滞在と、20回以上ものエンジンの再点火が可能という性能は、通常の人工衛星の打ち上げに使うことを考えると過剰である。今後、遠征一号の次に開発されるであろう、新しい上段がどのような性能を持つかが注目される。
遠征一号は北斗のような航法衛星や、静止軌道に投入される通信衛星などの打ち上げで威力を発揮する。従来であれば、ロケットの能力の限界から、衛星は目標軌道の一歩手前の軌道に投入され、そこからは衛星が自身のスラスターを噴射して、最終的な目標軌道まで移動していた。だがもし、ロケット側がそれを肩代わりし、目標の軌道や、それに近い軌道まで衛星を送り届けることができれば、衛星にとっては大きな負担軽減となる。実際に、これまでの北斗衛星や静止衛星の打ち上げでは、ロケットは目標軌道の一歩手前の軌道に衛星を投入していたが、今回の打ち上げでは、北斗衛星17号機は高度約3万6000km、軌道傾斜角55度の、実際に衛星が運用されるのに近い軌道に投入されている。