テレビ・ワンシーン考現学 (4) 帰国ラッシュの映像はいっつも同じである
と前のめりな態度だが、こちらは「それ、毎度お馴染みなんで、もう知っています」と呆れている。空港での帰国ラッシュの映像はいつも同じ作りをしている。大きなキャリーバッグを載せたキャリーカーに寄りかかるように疲れた子どもが寝ていることを知っているし、マイクを向けられた妻が「ハワイに6日間ほど。おかげ様でゆっくりできました」と答えることを知っているし、マイクを向けられた旦那が「会社は明日から?」と問われて「はい、明日からです。現実に戻ります」と答えることを知っている。
○別の帰国理由を挟み込むべきではないか
伊藤先生の光合成ビデオの再放送は皆から待望されたが、帰国ラッシュの映像のリフレインはそんなに待望されているのだろうか。テレビ局の映像保管庫に出向き、各年の帰国ラッシュの素材を見比べたいくらい、これほど変化に乏しい映像も珍しい。5年前と現在、街中インタビューならばファッションが変わるし、年末の列島各地の風景ならば、その年の顔を題材にした「変わり羽子板」で変化がわかる。
あの羽子板が100%の確率で「もう1歩」な出来なのもいつか議論したいが、帰国ラッシュの映像はその年だと特徴付けるものが皆無。