2015年5月12日 12:00
兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (10) 健康で文化的な兼業漫画家の生活
と「会社が潰れる可能性」を比べると、どう考えても前者の方が高い。これに「会社をクビになる可能性」をプラスすると五分五分ぐらいになってしまうが、今回は含めないものとする。
とはいえ、今勤めている会社の給料はとても良いとは言えず、会社に行っている時間を漫画に使った方が割が良いかもしれない。しかし、今の会社には6年勤めているが、私の漫画連載で6年続いているものなど1本もないのである。また、今は良いが、この先10年、20年と自分に漫画の仕事の依頼が来るというビジョンがどうしても思い浮かばない。むしろ、給与というベーシックインカムを心の支えに、何とかこの不安定な仕事を続けていられるとも言える。その支柱を失ってしまったら今以上に打ち切りに怯え、酒に逃げ、それを空中とび膝蹴りで止めるアシスタントを雇わねばならず、ますます非経済なのである。
先日亡くなられた桂米朝氏が「芸事で生きる人間は末路哀れは覚悟の内」とおっしゃっていたが、「俺は末路哀れで良いから漫画を描く」と思っている漫画家よりは、一獲千金を夢見た結果、末路哀れになっているケースの方が多い気がする。
そして私のように、人一倍末路哀れな自分ばかり想像するタイプは、何らかの保険なしにはとても漫画など描けないのである。