2015年5月12日 12:00
兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (10) 健康で文化的な兼業漫画家の生活
○専業を夢見るも…
このように、兼業漫画家生活の利点は多々あるのだが、正直、漫画家1本にしてもっと自由な生活を送りたいという気持ちは非常に強い。会社に行っている時間を漫画に費やせば、作品の質が上がり大ヒット、結果的に会社を続けるより懐も潤うのではと考えることもある。しかし、「時間があれば」と言っている奴は、時間があっても5億%何もしない。会社を辞めたとしても、漫画製作時間はそのままに、余った時間は何もしないに決まっている。
それに、ネガティブな人間に時間があるというのは危険なのだ。ポジティブな人間なら、リフレッシュしたり新しい事を始めたりと余暇を有効に使うだろうが、ネガティブな人間に時間を与えるというのは「いらんことを考える時間を与える」ということなのである。つまり、会社を辞めたことによってできた時間全てを「会社を辞めたことに対する後悔」をする時間に使ってしまうのだ。
よって私のようにネガティブで、自らを律することができない人間は、会社と締め切りで、縛り上げ、いらんことを考える暇もなく仕事をしている状態が一番健康的な生活と言えるのである。
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。