2015年6月2日 12:00
兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (13) 「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
一人あたりにかけられる時間は長くて3分。しかもこちらは絵とサインを描かなければいけないので、会話できる時間はごくわずかなのだが、はっきり言ってそれすら持たない。むしろ絵に集中するフリをして、目を合わさないようにしているぐらいであり、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
同窓会とサイン会の違いは、来る人間がほぼ100%自分に会いに来ているという点にある。自分に会いに来たはずの人間が全員私を無視して、その場で酒盛りや王様ゲームをやり始めたというなら話は別だが、そうしてもらった方が楽なぐらい、何も話せないのである。
では、読者は単行本と空(くう)を交互に見つめ続ける作家から、無言でサイン本を受け取るしかないかというと、そうではない。ここで助け舟を出すのが担当である。サインを描く作家の隣には、大体担当が控えている。
漫画の編集とは、漫画家をあることないこと口手八丁でなだめすかして漫画を描かせるという心のない人間ぞろいだが、こういう時には役に立つ。作家がサインに集中(するフリを)している間、「どこから来たんですか?」など、当たりさわりない会話で間をもたせてくれるのである。
しかし、個人的にはこの「どこから来たんですか」