2015年9月1日 12:00
兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (26) 兼業漫画家の「作業用BGM」
元来嫉妬深い性格なので、自分の作品と比べたり、あら探しを探してしまったりと、純粋に楽しむことができないのだ。
漫画家になったことによる最大の不幸は、「〇〇万部突破」などの文言で、その作者に大体いくら入ったかわかるようになってしまったことである。漫画家になる前は「売れてんだな、儲かってんだろうな」ぐらいにしか思わなかったが、自分も本を出すようになり、その計算方法がわかった今、「100万部突破」などと書かれた帯を見た瞬間、顔じゅうの穴から血が吹き出し、読むどころではないのである。
話を映画に戻すと、見ることができるジャンルは漫画と同様に年々減ってきているものの、内容が自分から遠い分野のフィクションであるなら、今でも映画を鑑賞することはある。日常がディープブルーすぎるので、フィクションの世界では1ミリたりともブルーになりたくないのだ。
まず、人間関係を主題にした映画はダメだ。この時点で、恋愛物を筆頭に大体の映画がダメになる。そして、できるだけ自分の生活とはかけ離れたものが見たいので邦画もダメだ。
つまり洋画のアクションものぐらいしか安心して見ることができないのだが、それだって最終的に主人公が命を落とすなどの鬱展開があり得る。