鈴木亮平、試行錯誤のリーダー論「人が変わるのは立場を与えられたとき」
土方さんが、ある種、超人のような完璧な人だとしたら、今回の近藤には弱さがあって人間味がある。僕は好きです。
○■近藤の最後のシーンは“炭酸の抜けたジュース”
――土方との最後のシーンに泣きました。あのような繊細なシーンの前には、集中する時間をかなり取るのでしょうか。
いえ、あそこはすごくナチュラルに行くシーンだろうなと思ったので、それはなかったですね。全然気合いの入ったシーンではなく、むしろ気合いが抜けてしまった後、炭酸が抜けたジュースのような近藤なので。刀が使えなくなったときに、炭酸が抜けちゃったんですよね。そう僕は思っています。
あの時点で、近藤はちょっと楽になれたんじゃないですかね。
――そうですね。
器じゃなかったんです。こういうと残酷ですけど、新選組を背負うことはできたけれど、政治の世界や、あまりにも移り変わっていく時代のなかで、変化していくほどの器用さがなかった。出が武士じゃないからこそ、武士としてのプライドを捨てられなかった。刀を振れなくなり、武士の象徴を無くしてまで、精神的にずっと突っ走るということは、土方ほどはできなかった。『燃えよ剣』のなかでは、そう描かれていますね。