2015年12月2日 10:00
X線天文衛星「ASTRO-H」がプレス公開 - 絶対温度0.05度を実現する冷却装置に大注目
つまりX線観測を使えば、宇宙の中で激しく活動中の領域の様子を調べることができるというわけだ。
そういった活動領域の代表格はブラックホールだ。最新の研究では、銀河は誕生したときから中心にブラックホールがあり、ともに進化してきたらしいということが分かりつつある。しかし、その進化のメカニズムはまだ分かっていないことも多く、従来のX線天文衛星より広い波長域を高感度で観測できるASTRO-Hを使って、謎を解明することが期待されている。
ASTRO-Hには4種類6台の観測装置が搭載されるが、その目玉と言えるのは「軟X線分光検出器」(SXS)だ。これは日米が共同開発した装置で、「マイクロカロリメーター」と呼ばれるセンサーを使い、受光したX線光子のエネルギーを超精密に計測する。エネルギーが分かれば波長が分かるので、ドップラー効果を利用して、対象天体の動きまで見ることができるようになる。
SXSのキー技術となるのは冷却機構。
マイクロカロリメーターでは、X線光子が素子に当たったときにごく僅かに温度が上がることを利用しているので、素子を極低温に維持する必要がある。そのため冷媒として液体ヘリウムを搭載するのだが、同様の観測装置を搭載したすざくでは、打ち上げから1カ月でこの液体ヘリウムを全量喪失するという不具合が起きてしまい、観測できなかったという経緯がある。