2015年12月8日 15:30
抱きしめてヴィーナス - 探査機「あかつき」、金星への帰還 (2) いかにして「あかつき」は金星への再挑戦にこぎつけたのか
そして12月7日8時49分、「あかつき」はあらかじめ送られたプログラムどおりにエンジンを噴射した。噴射時間は約11分間。その直後の8時50分43秒には、「あかつき」は地球から見て金星の裏側に入るため、通信はできなくなる。計画では9時1分にエンジンが自動で止まり、9時12分3秒に金星の裏側から出てきて、「あかつき」との通信が再開されるはずだった(地球と金星との距離が離れているため、厳密にはこの時点で3分半ほどのタイムラグがある)。
しかし、その通信は来なかった。アンテナは探査機が飛んでいるであろう空間に向けられている。にもかかわらず通信がこなかったということは、その空間に探査機がいないか、機体が回転しているか、あるいは壊れていることを意味していた。
最終的に「あかつき」からの電波を地球で捉えることができたのは、10時26分前後のことだった。
翌日には、NASAのジェット推進研究所(JPL)による軌道計算の結果が伝えられた。それによると、計画の約2割の減速しかできていないことがわかった。この時点で、たとえ探査機が正常でも、すぐに再度エンジンを噴射して金星周回軌道に入ることはできないことがわかった。