岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (10) 「人民元」変動スピードをいかに抑えるか? 日本が”反面教師”の中国通貨戦略
となり、日本の2.5倍以上の金額となっています。
人民元は2005年7月までは米ドルに対して実質的に1ドル=8.28元に固定されていました。
試算された数値にはバラつきがありましたが、この水準では25%~40%ほど人民元が米ドルに対して過小評価されていると言われていました。
そして段階的な切り上げを実施してきた結果、2005年から7年という長い歳月を経て、対ドルでは約24%人民元高が進みました。
ここ10年の中国の為替政策現状の水準について温家宝首相も「人民元はすでに均衡水準に近づいた可能性がある」と指摘しています。
ここ数カ月だけをみればこれまでの元高の上限であった±0.5接近することが少なく、むしろ下限である元安方向に動いていました。
そのため、市場は今回の変動幅の拡大が必ずしもさらなる元高につながるとは考えてはいません。
元安ということは米ドルを買って元を売る動きがあることですから、中国国内に投資していた資金を海外の投資家は撤収させているという状況です。
変動幅拡大となれば、そうした動きを加速させるものになるのではないか、と思われるかもしれません。
中国からの資金の流出は欧州債務懸念が最悪となった時期と重なります。