岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (10) 「人民元」変動スピードをいかに抑えるか? 日本が”反面教師”の中国通貨戦略
輸出主導で貿易黒字を拡大させ、経常黒字を維持する経済大国と成長していく過程では通貨高となるのは必然です。
であるならば、そのマイナスのインパクトをいかに最小限に抑えるか、経済運営の手腕が問われるところです。
通貨高は国益にもなりますが、問題はそのスピードであるという認識がされ、それに対応する戦略を中国は練ってきたということです。
日本の通貨制度の変遷から学んだ中国は、弾力的な為替政策をゆっくり進ませ、企業、個人、金融機関が変動相場制に対して適応する過程が必要ということを通貨戦略の前提としています。
そして、自国にとって都合のよい政策を貫くためには、他の国から、例えば為替操作国などの指定がされ改革を迫られる前に自身でアクションに起こす方が得策です。
2005年の変更は胡錦涛国家主席の訪米、ブッシュ大統領との会談の前、2007年の変更の際も5月22日ワシントンで開催される閣僚級の米中三略対話の直前、そして今回もIMFやG20の直前に変更が発表されています。
外圧をかわすのにはもってこいのタイミングと言えるでしょう。
中国は自国の通貨政策の変更をも利用して、外交でのイニシアティブを発揮しているともいえます。