5月以降の金融市場では、欧州債務問題に対する不透明感が再び強まったことで、投資家のリスク回避姿勢が高まり、安全資産とされる国債が買われる一方、株式などのリスク資産が売られる展開となりました。
そうした中、比較的リスクが高いと考えられている新興国債券の底堅さが注目を集めています。
新興国債券は、従来、投資家のリスク回避傾向が高まるような局面においては、各国の経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)にかかわらず、投資資金が流出する傾向がみられていました。
実際、2008年のリーマン・ショック時には株式市場同様に、下落幅は大きくなりました。
しかしながら、2010年4月のギリシャ債務危機や2011年7月の欧米債務懸念、また、今回の欧州債務懸念の波及による同資産の価格の下落は限定的なものにとどまりました。
これは、新興国の財政・経常収支が相対的に安定傾向にあることへの評価が進んだことなどが背景にあると考えられます。
新興国は、1990年代から2000年代初めにかけて経験した通貨・金融危機の教訓から、外貨準備の積み上げなどを通じて対外債務返済能力を高めるなど、財政基盤の強化に努めてきました。