岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (20) 日銀が金融緩和しても給料上がらず…”あり余る資金”どう民間に流すかが問題
(1)から(2)へとセットになることによって初めて、日銀からの資金が実体経済に回っていくことになるのです。
ところが、実際には金融機関はここ10数年、貸し出しを抑制したままです。
その原因としては長らく続く不況により、貸出ししても大丈夫と思えるような企業の選定の目が非常に厳しくなったということがあげられます。
体力のある大企業であれば融資はしますが、こうした企業は内部留保、すなわち企業内に溜まった収益がたっぷりとありますから、あらためて金融機関から資金を借りる必要はありません。
景気の先行きが不安なため設備投資も雇用も手控えたままです。
逆に、資金の供給を切実に願う中小や零細企業などには貸し渋り、貸し剥がしなどが横行したこともありました。
結局、民間にお金が回らないまま、日銀から供給された資金は金融機関の口座に溜まる一方となりました。
これを金融業界では通称「ブタ積み」と呼んでいます。
(豚には申し訳ない限りですが、無駄な資金の積み上げ、という意味で使っています。)さて実際に資金を日銀が金融機関に供給する場合には固定金利オペレーションを実施します。
具体的には金融機関が保有する国債などを日銀が買い入れるかわりに資金供給を行うというものですが、これまで応札額が入札予定額に満たない「札割れ」