2012年9月26日 18:24
名古屋メシ「ひつまぶし」の作法を発祥店「蓬莱軒」のおかみに聞いてみた
落ち着きの佇(たたず)まいに、おかみの風格が漂っている。
メディアに頻繁に登場して笑顔を振りまいていた先代に負けず劣らずの有名人で、客に記念写真をせがまれることも珍しくない。
ひつまぶしはお櫃(ひつ)に盛られたご飯の上に、細かく刻まれたうなぎが載った独特の丼だ。
最初はそのまま、次に薬味をかけていただき、最後はお茶漬けで〆る。
この「味の三変化」こそ、ひつまぶし最大の特長だ。
飢餓状態は頂点に達しているが、これは取材だと自分に言い聞かせる。
まずは、そのいわれをおかみに伺おうではないか。
「ひつまぶしの由来を教えてください」。
おそらく百万回は投げかけられたであろうこの質問。
おかみは嫌な顔ひとつせず、「このかいわいは江戸時代、東海道五十三次の「宮宿」があり、人の往来でにぎやかだった」と話し始めた。
当時は木曽川で天然うなぎがよく捕れ、「弥次喜多の物語にも“名物が蒲焼とかしわ”と書かれています」とのこと。蓬莱軒がここ宮宿近くに店を構えたのが明治6年(1873)。
うな丼の出前注文が多く、明治中期にアイデアマンの店主が大きなお櫃に人数分をドン!と盛って出前したのが、そもそもの始まりだそうだ。