佐賀の「シシリアンライス」、絶品なのに知名度が低いのはなぜ?
そして、この料理と佐賀県の認知度を高めようというようなリーダー的人物も……見渡す限り、ここ佐賀にはいなさそうだ。
シシリアンライスを頬張る筆者の横では、地元のオヤジが黙々とカツカレーを食べていた。
ちょっと肩透かしをくらった気分で食後のコーヒーを静かにすすっていると、ドヤドヤと県外からの観光客らしき女性たちが入店。
シシリアンライスを一斉注文したのだ。
そうそう。
観光というのはこの華やかなノリだ。
このノリがうまく動けば、巨万の富になるのだ。
彼女たちの手には、有名全国誌の観光ガイドブックがしっかりと握られている。
それにしては迎える側にサービス精神が乏しいというか、媚(こび)がないというか、覇気がないというか。
……相変わらずだな、佐賀は、と思ったしだいである。大量のシシリアンライスの注文を受けた喫茶店のおばさんは、女性客たちの華やかさに気おされることもなく、かといって彼らと楽しく語らうこともない。
ひとりカウンターの奥で淡々と、丁寧に新鮮野菜の盛り付けをはじめた。
その、ゆっくりとした動きをじっと見ているうちにハタと気づいた。
全国のブームに飛びつかず、あまり同調もせずサービスもせず、注文を受ければ、おいしいものをきちんとつくって素朴に出す。