長野県佐久平を中心に振る舞われる鯉料理は、なぜ人を惹きつけるのか?
鯉の旺盛な食欲によって、田んぼにいる害虫や雑草が激減するだけでなく、鯉が泳いだり土をつっついたりすることで、水が濁り、雑草が芽吹くのを防げたそうだ。
やがて秋の落水期には、体長15センチほどの「当歳」(とうざい)と呼ばれる1年鯉に成長する。
水田から引き上げられた鯉は、一部を残して背開きし、串に刺していろりの上につるされ、冬の保存食にされていたそうだ。
残された「当歳」は池で越冬する。
当時、佐久の家の台所の下は、鯉を放すため池になっていて、料理のくずや、お茶を飲んだ後の茶葉などがそのまま池の中へ落ちる構造になっていた。
放たれた鯉は、それを餌にして冬を越していたという。
蚕のサナギもそうだが、佐久の鯉の養殖には無駄が全くないようだ。
そして翌年、越冬した鯉はその年の稚魚と一緒に水田に放養される。
ちなみに、育てて2年目の鯉を「中羽」(ちゅうっぱ)、3年目の鯉を「切鯉」(きりごい)と呼ぶのだそうだ。「他県では、年末に新巻鮭を食べるんだと思うけれど、佐久では鯉を食べてきたんですよ。
それ以外に、冠婚葬祭などに鯉は欠かせません。
ここ4年ほどでまた鯉をよく食べるようになったからか、年末にスーパーに行くと鯉がたくさんおいてあるんですよ」