くらし情報『恋をするようにランジェリーを選ぶ』

恋をするようにランジェリーを選ぶ

恋をする瞬間はいつも何気ない。なんとなく元気で、なんとなくよい気候で、なんとなく世界が鮮やかに見える日に、不意にふわっと心が宙に浮き、揺れ動き、ああ私いま恋をしたのかな、と自覚する。「今日こそは恋をするぞ」と意気込んだからといってできるものではないから、おもしろい。

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下着を自分で選ぶようになったのは、高校生のころだった。どんなものがよいのかわからず、また店員さんに尋ねる勇気もとうていなかった私は、ファッション誌の特集に「男子はぶっちゃけどんなブラが好き⁉1位はなんと水色!」などと書いてあったのを頼りに、しばらく淡い水色の下着を買い続けていた。自分に似合うかどうかなんてまったくわからなかったし、いま思えばたぶん似合っていなかったと思う。

人生で初めて下着にときめいたときのことを覚えている。いつもどおり水色を買おうかとファッションビルのランジェリーショップに立ち寄ったとき、マネキンが装着していたブラジャーがすごく素敵で、輝いて見えた。
それは深い赤だった。それまでの水色が急に軽薄に思え、これをつければ世界の真相に一歩踏みこめると錯覚するような、そういう出会いだった。この感覚をよく知っている気がして、ああ、恋だ、と思う。

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