秋の夜長を味方に。【TheBookNook #6】
2.恩田陸『夜のピクニック』
青春小説の代表作ともいわれる今作品。人間の複雑な感情と存在の意味に思いを馳せさせ、孤独と希望が交差するクライマックスまで読者を引きずっていく、“永遠の青春小説”です。
恩田陸の緻密な描写と深みのある文体、哲学的なテーマが語彙力豊かな読者にさえも訴えかけてきます。登場人物達それぞれの抱える想いや悩みが交差し、その歩みが進むにつれて、物語も一歩ずつ進んでいきます。
苦痛だが終わってほしくない青春と、覚えのあるはずのない日常に触れ、きっとあなたも本を閉じた後、表紙の“黒”が嘘みたいに眩しく見えることでしょう。“戻れない”って美しい。
3.三浦しをん『舟を編む』
“辞書”の完成に向け、奮闘する辞書編集部を舞台にした本作品。“言葉”という絆を得て、登場人物達の人生が優しく編み上げられていきます。
難しい言葉もあり、久しぶりに辞書を引き、メモしながら読み進めました。登場する一つひとつの言葉が多様な意味を持ち、豊富な解釈に富み、時代によりその色さえも変えていきます。不器用な主人公を応援せずにはいられず胸が熱くなりました。
さらにこの作品を通して日本語の奥深さと曖昧さ、美しさを再認識でき、人生の早い段階で出会えて本当によかったなと思える作品でした。