「猫」を取り巻く純文学。【TheBookNook #8】
「猫」を取り巻く純文学。
文:八木奈々
写真:後藤祐樹
「猫」。
さっきまでのんびり寝ていたかと思えば、風で動いたカーテンや突然訪れた虫たちに大歓迎とばかりに飛びつき戯れる、そんな自由気ままに生きるその姿はどこまでも愛おしく、どこか羨ましく、その前では多くの人が無条件に笑顔になってしまいます。
そう、もしかしたら疲れた私達人間に癒しを届けるためにやってきた魔法使いなのかもしれません。
写真はイメージです。
そんな猫たちに魅了されるのは、日々文章を紡ぐ作家さんたちも同じです。その証拠にあらゆるジャンルの本に“猫”はその姿や立場を変えて自由な形で登場しています。
今回はそんな“猫”の魅力を再確認できる、猫好きさんの心を掴んで離さない癒しの“猫”作品をご紹介させていただきます。
1.奥泉光『「吾輩は猫である」殺人事件』
題名の通り、かの有名な「吾輩は猫である」の“あの猫”が生きていたという設定に始まる本作品。夏目漱石を彷彿とさせる文体で続編小説のように楽しめます。親しみのある登場人物達が思わぬ陰の一面を持っているなんて考えも及ばず、“腑に落ちないまま”惹きこまれていきます。
冒頭のあの一文がこんな展開に繋がっているなんて、そして、ちゃんと収拾がつくなんて……。