「猫」を取り巻く純文学。【TheBookNook #8】
登場人物の会話シーンは少なく、私達読み手の五感、はたまた六感にまでも訴えかけてきます。
沢山の因果が折り重なって進んでいくストーリーは、チェスを知らない私でも、芸術的なチェスマッチのように感じられました。そして、チェスの盤、ビルの屋上、回送バスの中……物語の中の景色一つひとつは“自分が収まっている限られた場所”を儚く美しく意識させてきます。
読後、この物語を素直に“うつくしい”と思えたとき、私は涙が出てきました。ぜひあなたも耳を澄ませ、息をひそめ、小川洋子の世界に深く沈んでみてください。
■純文学であなたの世界を広げてみませんか
娯楽性よりも芸術性に重きを置いているとされる“純文学”ですが、実は読み手に優しい物語も多く、その世界にどっぷりと浸からせてくれます。
ぜひ、猫をはじめ、好きなものを通して普段は読まないジャンルにも手を伸ばしてみてください。あなたの見ている世界が広がりますように。
■「TheBookNook」について
この連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」