くらし情報『恐ろしく素敵に騙されたい 【TheBookNook #16】』

恐ろしく素敵に騙されたい 【TheBookNook #16】

文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹

鳥肌がたつような恐ろしい物語や映像作品はこの世にたくさんありますが、怖くない物語のはずなのに読み手にだけ伝わる違和感に不安を感じたり、物語なのか現実なのか、はたまた妄想なのか、背後に視線を感じて思わず振り返って確認してしまうような、不気味な小説に出会ったことはありますか?

目次

・1.今村夏子『むらさきのスカートの女』
・2.黒澤いづみ『人間に向いてない』
・3.フランツ・カフカ『変身』
・繰り返し読んで、本の世界のさらなる深淵へ
・「TheBookNook」について


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写真はイメージです。

全く他人事ではない人間の嫌な部分や、小さな世界の常識に染まって知らぬ間に歪んでいくさまを活字で見ると、自分のことのようにゾッとします。おそらくこういった作品は万人受けはしません。ただ、私は物語の登場人物達に自分の感情の奥底を搔き乱される感覚が大好きなのです。

今回は、そんな私が出会った、決して怖くは描かれていないのに背筋が凍る、読後は脳裏にこびりついて離れない作品を紹介させていただきます。恐ろしい活字の世界に素敵にダマされる快感をぜひ。

1.今村夏子『むらさきのスカートの女』

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この作品は、主人公の女性が近所に住む“むらさきのスカートの女”とお近づきになろうとする物語なのですが……、この女、いや主人公の女までもがどこかおかしいのです。

過剰な執着心と異常な自己投影、奇妙な空気感と豹変していく主人公のさまは、まさに狂気と紙一重の滑稽さ。

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