男性ふたりの間で板挟みに! 「求塚」に学ぶ、選ばぬ先の地獄【能楽処方箋】
と伝えると消えてしまいます。
僧が塚を弔っていると、やがて憔悴しきった菟名日処女の亡霊が姿を現します。亡霊は地獄の責めに苦しむ様子を見せると、また「求塚」へと戻っていくのでした。
*塚…一般に墓のこと。
出典:https://kotobank.jp/word/%E5%A1%9A-99048
■菟名日処女と失われた3つの命
なぜ、菟名日処女は死後も苦しみ続けなければならなかったのでしょうか。
一連の事件の中で、菟名日処女のほかに3つの命が落とされたこと。そこに疑問を解き明かすヒントがあります。
3つの命のうちのふたつはもうおわかりですね。
自殺した菟名日処女の後を追ったふたりの男の命です。ではあとひとつは何かというと、1羽のおしどりでした。
男たちに求婚されたとき、菟名日処女は選ぶことができず、男たちにこんな提案をします。
「あの生田川にいるおしどりを先に射た方と契りましょう」
しかし、矢は同時に1羽のおしどりに命中してしまいます。
おしどりといえば「おしどり夫婦」という言葉にあるように、雌雄一緒にいることが多い鳥。菟名日処女は、罪のない夫婦の鳥の仲を引き裂いてしまったと自分の業の深さを嘆き、川に身を投げて死にます。