くらし情報『男性ふたりの間で板挟みに! 「求塚」に学ぶ、選ばぬ先の地獄【能楽処方箋】』

男性ふたりの間で板挟みに! 「求塚」に学ぶ、選ばぬ先の地獄【能楽処方箋】

彼女は罪の意識に苛まれて自殺してしまいます。

さらに想定外だったことは、男たちが自分の後を追ったことでしょう。「自分で選択しない」という“選択”が、悪循環を生み出した。それだけでも恐ろしい話です。

■自ら選択するということ

「選ばない」ことで、続く地獄

金子先生「この曲のさらに恐ろしいところは、菟名日処女が最後、『求塚』へと戻っていくことです。彼女は死んでも、まだ『選べない』ままなんですね」

塚に戻る以外の選択肢が彼女にはあったということでしょうか。

金子先生「この能は、僧と菟名日処女の亡霊が出会うことに端を発します。最終的に彼女は地獄に落ちて救われないままですが、もしかしたら僧に成仏させてもらうこともできたかもしれない」

菟名日処女が描かれた時代は、女性が自分の望む通りに行動する自由はあまりなかったのでしょう。
自ら思考し選択するという力が培われないまま育てば、自分の置かれた状況に疑問を抱くことなく感覚が麻痺してしまうことも十分に考えられます。

また、絶えず地獄の業火に焼かれ続けて憔悴し、「救われたい」と願いながらも、目の前の希望を見出す力や判断する力まで奪われていたのかもしれません。

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