男性ふたりの間で板挟みに! 「求塚」に学ぶ、選ばぬ先の地獄【能楽処方箋】
後悔にとらわれず人生を歩むために
幸いにも私たちは「求塚」の時代に比べたら、選択の自由が許される時代に生きています。
金子先生「お話したように、『求塚』はひとつの選択放棄からずるずると身を滅ぼしていく話と読み取ることもできます。時代を考えれば仕方がないことだ、と済ませることもできますが、現代の価値観を投影することで、また違った教訓を得ることもできるのではないでしょうか。
何かを選ぶということは、時にその他の何かを捨てることでもあります。
まったく後悔のない人生を歩むというのは難しいことですが、自ら決断を下すことで、自分の人生のかじ取りをしながら進むことができるはずです」
「何かを選ぶことは、何かを捨てること」――金子先生の言葉が身に沁みます。
迷いが生じたときには、菟名日処女の教訓を思い出して、本当に自分で考えて下した決断か、誰かの意見や世間の目に惑わされてはいないか、振り返ってみるとよいかもしれません。
■この方にお話を伺いました
金子直樹さん能楽評論家。高校のときに能「阿漕」を観て、能楽が持つテーマの現代人に通じる普遍的情念に感動し、能楽の研究・評論を行う。国立能楽堂開場以来のプログラム執筆や、「能楽タイムズ」