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「落語」という男社会で道を開く――日本初の女流落語家・露の都さんインタビュー

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■男の世界である落語界に、ひとりで飛び込んだ女子高生


この世界を志したのは女子高生のとき。テレビで見た笑福亭仁鶴さんの落語がきっかけだった。

「仁鶴師匠の落語、とにかく面白くて引きこまれました。それまで落語を聞いたことがありませんでしたが、『やってみたい!』という思いひとつでした」と都さんは語る。

それから必死にネタを覚えて、テレビ番組『素人名人会』で落語を披露し、好評を博す。
そのとき審査員をしていた落語家・露の五郎(後の露の五郎兵衛)さんに弟子入りを志願した。しかし、その答えは――。

「『アカン!』とバッサリ、断られました。
それでも半年間通い続けました。師匠のお着物をたたんだり、履物を出したり。やっと入門を許可されたのが、高校卒業直前の3月のことでした」

■「女の落語は気持ち悪い」と言われることも


入門するまでは女性の落語家はひとりもいない。本当に男だけの世界だった。そんな環境の中での入門は、非常に勇気がいるはずだ。

「当時の私は女子高生。なにも知らずに飛び込みました。なにも知らないからこそ、ここまでやってこれたんだと思います。
落語は男のもの。女の落語はどうしてダメなのか?それを知っていたら、きっとチャレンジできなかったはず。
お客さんに『気持ち悪い』なんて言われたこともあります。でも、なにを言われても気にする暇がありませんでした。修行中は本当に忙しかったので」

一晩寝たら忘れる“気楽な性格”なところもよかったのかな、と笑顔で振り返る都さん。女流落語家として活躍する今でも「落語は男のもの」という気持ちを忘れていないという。

「今でも、落語は男のものだと思っています。私には女の弟子もいますが、男社会で生きていること、落語は男のものだと忘れるなと教えています。

女が落語をやると、声の作り方やしゃべり方など、できるようになるまで時間がかかります。男性は、アマチュアでもすぐに落語らしくなる。それは男と女が持っているものの違いかな、と思います」

■一流の仕事に、男も女も関係ない


男社会を生き抜いてきた都さんに、同じように働く女性へのアドバイスを求めてみた。

「仕事をする上で、私は男か女かは気にしていません。露の都というひとりの落語家であること、ただそれだけ。やるべきことをしっかりやって、仕事の内容がどれだけできるかが評価される世界ですから。風当たりが強かったとしても、結果を出してやりつづけること。これが大切ですね」

また女性だからこその“決め事”があるという。


「落語」という男社会で道を開く――日本初の女流落語家・露の都さんインタビュー


「女だからこそ、舞台衣装の着物や化粧にはお金をかけています。ちょっといい着物を着て、メイクをしっかりすると、スイッチがONになる。背筋が伸びて、気合が入り、いい仕事ができます」

ポイントは、「買えなくもないけど、ちょっと高い」と悩んでしまうものを、エイッ!と買うことだという。分相応の中で、ちょっとだけ背伸びをすること。そうすると気合が入って、心の底からエネルギーが沸いてくるのだとか。

「お金をかける物は、人によって違っていい。ファッションでも、小物でも、レストランでも、自分の気分が上がる体験を探してみて」と都さんは語る。

■悩まないコツは、自分が「無」になれる時間を作ること


厳しい伝統芸能の世界にいながらも、「やめようと思ったことは一度もない」という。


“一晩寝たらすべて忘れる”という気楽さを持ち合わせる彼女に、悩みに溺れないコツを聞いてみた。

「時間があると余計な事を考えてしまいます。私は今まで修行や、仕事と家庭の両立など、悩む暇がないほど忙しかった。だから悩みがちな人は、趣味や勉強、好きなことに没頭すると良いのでは。

ランニングでも、仏像を彫ることでもいい。とにかく『無』になれる時間を作るのが大切。ちなみに弱っているときは、男に救いを求めないこと。そういう時に限って変な男が寄ってきますからね……!」

たしかに、女が弱っている時に変な男に引っかかりやすいのは、この世の法則なのかも?

現在複数の弟子を抱える都さん。
時にやさしいお母さんのような語り口でインタビューに答えてくれた。ちなみに女性の新しい趣味として、落語鑑賞もオススメだという。

「テレビなど画面を通してではなく、ぜひ寄席に来て、生の笑いの空気を味わってほしい」とのことだ。

取材協力/露の都

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