わたしたちは不安を感じると、瞬間的に「悪いもの」という風に捉え、なんとかその不安を取り除こうとしがち。
はっきりとした理由のある不安の感覚もあれば、よく分からない漠然とした不安を抱えることもあります。
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度々やって来る不安が私たちの体に与える感覚は、決して心地の良いものではありません。
だからと言って、不安は本当に「悪いもの」なのでしょうか? いったい不安とは何なのでしょうか。
不安をあたらしい視点で見つめ、よりよい関係性を持つためにはどうすれば良いのかをご紹介します。
■体を使って「今、ここ」に寄り添う、「静」と「動」の方法
今あなたが不安な感覚を感じているならば、無理のない程度にゆっくりと体の感覚を観察してみてください。
その感覚は、決して心地の良いものではないかもしれませんが、大切な友だちの痛みに優しく寄りそうように、自分の不安の感覚とゆっくり時間を過ごしてみましょう。
その時、目を閉じて、息をゆっくり吐いて吸う深呼吸を繰り返すと、より効果的。
少し落ち着いてきたら、首と視線を動かしながら、今いる部屋の四隅を、ゆっくり確認してみましょう。
何か悪いことは、起きているでしょうか。「今、この瞬間」何も悪いことは起きていない、ということを目でゆっくりと確認してみてもOK。
そうすると、少しずつ気持ちが楽になってきます。
もし、それでも不安の感覚が続くようであれば、体を動かすこと。家であれば、掃除や洗濯をしてみたり、ヨガ、ジョギングやスポーツなどで汗を流すことも効果的。
不安になると、落ち着かなくなってくる感覚を体に感じる人も多いのではないでしょうか。
これはストレスが増える場合に何かしらの行動を取ろうとする体の反応に備え、筋肉にエネルギーの蓄えが起きている状態です。
つまり、不安になっている人間にとっては、ある意味で自分を守ろうとする「自然な現象」なのです。
ソワソワしたり、落ち着かず歩き回ったりということがあるなら、ストレスからのエネルギーがたまっているのだ、ということを認識し、ジョギングや運動などで積極的にそのエネルギーを発散させるようにしましょう。
このように、不安が起こす体の感覚に添うことは「静」、体を動かして汗を流すことは「動」ですが、どちらも、体を使って「今、ここ」を直に感じることにつながっています。
不安は、過去の記憶で思い悩んだり、まだ起こっていない未来への心配などからくることが多いのです。
「今、この瞬間」にしばらくの時間コミットすることで、不安の感覚はかなり軽減されます。
■「話す」ことは不安を「放す」こと
もちろん、これらを試してみても収まらない不安は、無理をせず、信頼できる関係の人に聞いてもらうということも、とても大切。
気をつけたいのは、「安全な話し相手を選ぶこと」。
ジャッジメントなくあなたの話を聞いてくれる人に自分の不安を話して共感を得ることは、私たちの神経システムを落ち着かせてくれます。
不安は恥の意識と深く関わっていることが多いので、なかなか口に出して言いにくいことでもあります。
しかし、安心して話せる相手に正直に話し、相手が共感を示してくれる時、「不安を感じているのは、一人ではない」「自分と近い悩みを持っている人がいる」ということを感じられて、大きな不安から解放されることも多いでしょう。
また、その人とのつながりがより強いものになったりするという、思わぬギフトを手にすることもあるかもしれません。
安全な話し相手を思いつかない時や、不安からの解放だけでなく、そこからどんな一歩を踏み出していけばいいのかを求める時は、心理カウンセリングやコーチング、心療内科などでサポートを受けるようしましょう。
プロフェッショナルなサポートを受けることは、不安を感じているのは、あなた一人ではないこと、そして求めればサポートはいつもあるということを覚えておきましょう。
■不安からのメッセージ「本来のあなたは誰ですか」
例えば、最初に出会った時に印象の悪かった人が、しばらく時間をかけて付き合っていくうちに「それほど悪い人じゃなかった」というように感じたことはないでしょうか。
ひょっとしたら、「最初は最悪な印象だったのに、しばらくしてとても仲が良くなった」という人もいるかもしれません。
私たちは、「知らないもの」「よく分からないもの」に対して、初めは警戒をします。
けれども、それが何なのかをジャッジメントなく観察していくと、最初の印象とは違うものが浮かび上がってくるということがあります。
私たちが不安を感じるとき、その体の感覚の居心地の悪さから、それをすぐ「悪いものだ」と誤って判断してしまうのもこれに似た反応なのです。
不安というのは良いものでも悪いものでもないという見方をすると、「まだ何も起きていない」状態です。
「まだ起こっていないこと」に焦りから反応することで、衝動的な行動をとってしまうと、何らかの不必要な損失を発生させることがあるでしょう。
つまり、避けるのは不安の感覚ではなく、「衝動的な反応」だということが分かります。
心配しすぎることなく、焦らず、寄り添い、観察を続けていきましょう。