ウーマンエキサイトをご覧の皆さん、こんにちは。tomekkoです。
前回の
森鴎外編で、そんなに知らなかった文豪のエピソードを知って興味を持てたよーといったメッセージを編集部宛てにいただいて、とても嬉しかったです!そしてこんな人も扱って欲しいといったリクエストも!
文豪、と題したこのシリーズですが、せっかく「いまむかし」をテーマとしているのでちょっと趣向を変えて、近代に限らず歴史に名を残した歌人なんかにも目を向けてみたいと思います。
いや実はリクエストをいただいて、私自身が(そういえばよく知らない…どんな人だったんだろう?)と興味を抱いたからなんですけど。
関係を持った女性は3千人超えという伝説の男!
なんと今回は平安時代まで遡っちゃいます!
最近控えめだったたぬ君が嬉しそう〜。
「在原業平」
歴史に興味がなくても、名前だけは聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
でも多分、パッと思いつく歴史上の人物って天下獲ったり何かを成し遂げたり日本で初めて何かをしたり…偉人と呼ばれる人たちですよね…?
そんな中、在原業平は何で有名かというと…。
『特に何も成し遂げてないけどあまりにモテすぎて歴史に名を残してしまった人物』なのです!
なんと関係を持った女性は3千人を超えるという伝説があります…! さすがにアバンチュール多すぎない?
その結果イケメンの代名詞のようになった業平は、後に書かれた『伊勢物語』の主人公のモデルにもなっています。
エピソードを読み進めていくと気づくと思いますが、長編恋愛小説『源氏物語』にも伊勢物語になぞらえた設定がいくつも出てきて、かの紫式部先生も参考にされたプレイボーイの日本代表なわけです。
とはいえ在原業平と言えば最初に出てくるのは歌人としての肩書き。和歌の名手として六歌仙、三十六歌仙にも選ばれています。
勅選和歌集『古今和歌集』を編纂した紀貫之をして「その心余りて言葉足らず(あまりに情熱が強すぎて表現する言葉が足りない)」と評させるほど、熱く激しい恋心を少ない文字の中に見事に凝縮した人なのです!
お…そういえばこの歌仙の中にはやっぱりモテすぎて有名人がもう1人いますね。
そう、美人の代名詞「小野小町」ですー。(業平はもちろん口説いてます! 美女最高峰には断られたみたいだけど…)
男女ともに、そんなに身分は高くないのにモテすぎた人が日本を代表する歌人として選ばれている。これは何か事情がありそうな…?
身分は高くない、と言いましたが、確かに在原業平は百人一首でも武装した姿で描かれています。彼の最終の官職である蔵人頭のユニフォームなわけですが、蔵人とは位階は高くなくとも天皇の覚えもめでたい側近。
実は、在原業平の出自を辿ると本来彼は皇族の血筋なのです。
しかし祖父である平城上皇が譲位したのちに天皇に反旗を翻し(薬子の変)それが失敗して一族は零落します。皇族から臣籍、つまり家臣の立場に格下げされてしまうのです。
一族は再興のチャンスを狙いますがライバル藤原氏によって妨害され、皇族に戻ることはできませんでした。
業平20歳ごろ、ちょうど働き盛り男盛りで周りの貴族の子息たちもどんどん出世街道を邁進しているのを横目に見ながら、落ちぶれた一族はまともに官位を上げてももらえないままくすぶります。
高貴な生まれで何不自由ない気ままな皇族暮らしが約束されていたはずなのに、親族の起こした政変によって不遇な運命に翻弄されて…。私なら仕事行くのも嫌になって引きこもっちゃうかもしれない…ところなのですが!
業平には物凄い才能…ポテンシャルがあったのです。
人がモテる条件は平安時代から変わらない?
“容姿端麗で自由奔放、勉強はそんなにだけど和歌がめちゃくちゃ上手い“ー『日本三代実録』(意訳)
平安時代当時、女性が顔や姿を家族以外にはうかつに見せない状態で恋はどうやって始まるかと言えば、美しいと噂に聞いた女性の家に訪ねていって、御簾越しに和歌のやりとりをして駆け引きをするわけです。
相手はどんな人柄なのかな、教養はどのくらいあるのかな、話は合いそうかな…?
現代なら飲み会や職場やアプリなどで出会って、容姿が好みだったり話が合えばその後も何度か会ってみて…お互いに恋愛感情が生まれればお付き合いしましょう〜となる流れを、相手の顔が見えない状況で言葉のやり取りだけで汲み取り合う平安時代!!
えーえーえーむっ…ずかしくない?
言葉のやり取りが大事な平安時代
小野小町や在原業平という和歌の天才は
和歌を詠むのが上手い=コミュ力が高い=モテ女・男
だということなんですね!!(もちろん当時の感覚で美男美女だったのも事実なのでしょうが。)
これからという時に不遇な環境でくすぶっていたであろう業平は、その心の穴を埋めようとしたのでしょうか?
ここからがクズ男の本領発揮となりますー。
数々の女性たちと浮名を流した業平ですが、中でも一番有名なのが政敵の娘でもあり天皇のお妃候補である高貴な姫君との禁断の恋に情熱をぶつけます。(おっとこれ源氏物語で見たような…?)
その関係はまもなくバレて別れさせられることになりますが…。
禁断の悲恋から、名歌は生まれるわけですね。